ダイバーシティ・スーパーグローバル
教員育成研修

ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(調査分析)報告シンポジウム「女性活躍指標に基づく女性研究者活躍促進に関する国際調査」の開催報告

 令和5年3月24日(金)、ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(調査分析)報告シンポジウム「女性活躍指標に基づく女性研究者活躍促進に関する国際調査」を九州大学椎木講堂コンサートホールにてオンラインとの併用で開催しました。本シンポジウムは、令和3年度に本学が代表機関として採択され、東京工業大学を共同実施機関として進めてきた女性研究者の活躍促進に関する国際調査の報告を行うものです。当日は、同じく本学が実施する先端型事業「ダイバーシティ・スーパーグローバル教員育成研修(SENTAN-Q)」の中間報告も兼ねました。なお、参加者は、対面参加103名とオンライン参加 143名の計 246名でした。総合司会はSENTAN-Q1期生の野村久子准教授が務めました。

 

 開会にあたり、調査分析事業の実施機関である九州大学の石橋達朗総長と東京工業大学の益一哉学長から挨拶がありました。来賓として文部科学省人材政策推進室長の岡貴子氏、国立研究開発法人科学技術振興機構プログラム主管の山村康子氏から、女性研究者活躍促進の必要性と、調査分析事業並びに先端型事業への期待のメッセージをいただきました。

 本シンポジウムのメインとなる調査分析事業は、女性研究者の論文業績から算出した部局別定量解析データをもとに、世界各国のトップ大学(総合大学と理工系大学)と情報交換を行うことで、各部局の抱える問題を明らかにし、解決策を見出すことを目的としています。

 

 第一部の調査分析事業報告では、調査対象機関から参加いただいたカリフォルニア大学 サンディエゴ校のサンドラ・アン・ブラウン元副学長、アーヘン工科大学のウルリケ・ブランツ イコール・オポチュニティ・オフィサーから女性研究者の現状と本事業への期待のメッセージをいただき、続いて九州大学の玉田薫副学長と東京工業大学の野村淳子教授が事業の実施報告を行いました。玉田副学長は、UC サンディエゴ校の分析結果を中心に、九州大学オリジナルの指標である女性活躍指標を用いた数値分析結果から、女性研究者の活躍度を数値で示しました。次に、UC サンディエゴ校の女性研究者を対象に行ったインタビューで得られた研究者・マネジメント層・Diversity, Equity & Inclusion (DEI)関連部署の意見やDEIに寄与する施策を紹介し、メンターシップ制度の重要性や、大学トップリーダーがDEI実現への姿勢を持つことの重要性を示しました。続いて、東京工業大学の野村教授は、EUでも日本と同様に、女性の教授の人数が少ないため女性の論文業績が低く見積もられがちであることを紹介しました。ドイツのアーヘン工科大学と東工大との比較では、論文業績は女性教員の比率よりもむしろ人数の多い分野で差異が現れないことを示しました。DEIへの施策としてドイツでは国・州が女性割合の目標値を法律で定めており、工科大学としてもできる限りの女性研究者支援を行っていること、加えてEUには広義のジェンダープログラムがあることを紹介しました。

 

 第二部の先端型事業(SENTAN-Q)中間報告では、はじめに玉田副学長が事業の概要を説明しました。次に、研修生選出の審査委員を務めるマチ・ディルワース元OIST副学長と大学ガバナンス研修の講師でイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のショーン・ガリック副学長から、このプログラムが優れている理由と期待のメッセージをいただきました。その後、研修生の坂東麻衣教授(第1期生)、太田真理准教授(第2期生)、顧玉杰助教(第4期生)の3名が、このプログラムで得られた経験や成果、今後の目標などについて報告しました。

 

 第三部の「すべての構成員が真に活躍できる大学環境を実現するには」をテーマとした総合討論では、玉田副学長と野村教授が司会を務め、パネリストとして石橋総長、益学長、ブラウン元副学長、ブランツオフィサーが登壇しました。討論では、主な論点として ①DEI実現に向けた大学トップのリーダーシップについて、② 数値で測れない問題にどう対処するかを含めた他大学への質問やアドバイスについての2点があがり、各大学の取り組みを中心に討論が進みました。この中でブラウン元副学長は「誰もDEIの問題解決のための最適な解を持っていない」とおっしゃり、DEI促進のための解は1つではないことを提言なさいました。大事なことは大学に合った好事例を見つけていくことであり、環境に合わせた取り組みが必要であることを示されました。

 

 最後に、東京工業大学の佐藤勲総括理事・副学長から、「多様性は属性に限らず、目に見えない個性をも含んだものであり、その多様な環境や働き方を考慮し、自分と異なるものを許容していくことが、インクルージョン・エクイティにつながる」との閉会の挨拶があり、シンポジウムが終了しました。

 

 本シンポジウムでは、各大学が取り組んでいるDEI推進に対する考えや施策を知ることができました。今後、各大学の風土・環境に合った好事例が取り入れられ、個々の意識が変わっていくことで、更なるDEI促進が期待されます。

(男女共同参画推進室 塚本 直子)

ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(調査分析)報告シンポジウム「女性活躍指標に基づく女性研究者活躍促進に関する国際調査」の開催報告 1
ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(調査分析)報告シンポジウム「女性活躍指標に基づく女性研究者活躍促進に関する国際調査」の開催報告

公開日: 2023.04.19. 0:00